リヨン子も知らないリヨン発見!!



リヨンを知るための決定版がついに出ました。

『荷風のリヨン』加太宏邦著 白水社刊  ¥2,600+税

明治の末に横浜正金銀行(後の東京銀行、現在の東京三菱銀行)の若き社員としてリヨンに駐在した永井荷風。

その体験をもとに「ふらんす物語」(新潮文庫・岩波文庫)を書いたことはよく知られていることです。本書は、この小説をはじめとする荷風のリヨンを舞台とする作品に登場する通りや橋、駅、市役所、劇場、すべてを現在と対比して詳しく描き出し、100年の時空を超えて私たち読者をリヨンに遊ばせてくれます。

2泊3日の、いやほとんどのツーリストがするような1泊2日のリヨン観光では決して見えてこない、素晴らしい世界が展開されているのです。

私がはじめてリヨンを知ったのは1972年、冬の霧の夜でした。その後何度がこの街を訪れてもこの印象は変わらず、今日に至っています。でも、本書の「霧」の項を読み、合点がいったのです。フランスへ行く前に荷風や遠藤周作が描いたリヨンをそのままそういう心象として捉えられたものが私の意識下で働いたのではないかと。

戦後すぐにリヨンに留学した遠藤周作とその作品にも触れており、日本の小説家がリヨンという都市とどう関わったのかもわかります。「ふらんす物語」を、そして遠藤周作の「白い人」を再び読みたくなりました。

宇田川政喜